この章ではオブジェクト指向プログラミングについて説明します。
オブジェクト指向プログラミングはC言語にはない機能であり、C++で新たに取り入れられた機能です。
オブジェクト指向型プログラミングは構造体に似た機能を持っています。
オブジェクト指向型プログラミングを使用すると変数と関数を1つにまとめることが出来ますが、この作業は「クラス」を使って行います。
つまり、「クラス」を使うことで、多くの変数と関数を1つの機能体として働かせてデータを処理することが出来ます。
クラスとは何かしらの物を作る「設計図」に例えられます。
設計図は車や家や鉛筆などをつくる場合に必要ですが、この設計図に当たるものがクラスです。
車や家や鉛筆の中には色々な部品が含まれていますが、それらの部品には「状態」や「ふるまい」があります。
例えば、鉛筆であれば、「状態」は鉛筆の形、芯、線の濃さなどで、「ふるまい」は線を引くなどの動作です。
その「状態」や「ふるまい」をクラスと言う設計図に書いていきます。
「状態」を変数で書き、「ふるまい」を関数で書くことになります。
どのような「状態」や「ふるまい」を作りたいかは「オブジェクト」の役割です。
例えば「線を書く」「線を消す」など具体的な指示をオブジェクトと言う司令塔から出します。
では初めにクラスの基本から説明します。
クラスの中に「状態」を変数に書き、「ふるまい」を関数に書きます。
クラスの中の変数をデータメンバ、関数をメンバ関数と呼びます。
これをクラスの宣言と言います。 クラス名が2文字で構成されている場合、それぞれの単語の先頭を大文字で書いて、その他は小文字で書くのが慣例になっています(この通り書かなくてもエラーにはなりません)。
次はオブジェクトの作成方法について説明します。
オブジェクトについては先ほど以下のように説明しました。 つまりオブジェクトから命令を出してクラスに対して仕事をさせる役割があります。 今まではint型などの変数を作っていましたが、オブジェクトは「クラス型の変数」を作ることを意味します。
このオブジェクトを作る過程をインスタンスと言います。
ではクラスとオブジェクトの関係のイメージをつかむためにもう一度説明します。
例えば新築の家をつくるとします。
ある人は家にプールを作ったり、床暖房を付けます。
そのことを実現するには設計図に「プールや床暖房」や「その機能」を付け加えないといけません。
実際には設計図であるクラスの中にプール、床暖房という変数を設定し、プールや床暖房の機能を定義するために関数内で水や床の温度を上げたり下げたりする機能を加える必要があります。
この設計図はそのままでは動きませんので、誰かの指揮のもとに動かさなくてはいけません。
その指揮者の役割がオブジェクトです。
オブジェクトは例えば冬になったらプールの水の温度を40度にするなど細かな指示をすることになります。
では実際に例を見てみましょう。 改めてクラスの定義の記述方法について説明します。 クラスはデータメンバとメンバ関数からできています。
クラスの中の変数をデータメンバ、クラスの中の関数をメンバ関数と呼ばれていることは説明しました。
アクセス指定子とはメンバに対して、どこからのアクセスを許可するのかを指定するものです。
つまり、クラスは複数作ることが出来ますので、どのクラスからアクセスすることができるのかを規定するのがアクセス指定子です。 クラスの中ではアクセス指定子の右側に「:」を付けて、その下にメンバ関数やデータメンバを記述します。
クラスの中に宣言をした後は、メンバ関数の実際の中身をクラスの宣言の下(つまりクラスの外)に書いていきます。 例えばgetPoint関数は以下のように書いています。 クラスの宣言の中にメンバ関数の中身を書いていく方法もありますが、説明は後ほどします。
次にクラスの中のメンバ変数にデータを入れる方法について説明します。
この例ではクラス名をkeisanと名付けていますが、クラスはただの設計図なので、これにデータを入れないと何も動きません。
データを入れるには初めにのようにオブジェクトを作ります。この例では以下の箇所です。 オブジェクトを作った後はオブジェクト変数名にドット「.」を付け、その後にデータメンバを置きます。
そして、その中に代入演算子を使ってデータを入れていきます。
つまり、 という構文でデータを入れます。 そして、次はメンバ関数を呼び出しますが、実際にメンバ関数を呼び出しているのは以下の箇所です。 tasu関数の中では入力した数が0より大きくて、200より小さい値だった場合、number変数にb変数の値を足したものをnumber変数に代入しています。
数値がそれ以外の数だった場合は が実行されてでプログラムを終了させています。
次はobj.hiku(num2);の部分を説明します。 ここでは入力した数が0より大きくて、200より小さい値だった場合、number変数からc変数の値を引いたものをnumber変数に代入しています。
number -= c;はと同じ意味なので、tasu関数で計算されたnumber変数の値からC変数を引いた値をnumber変数に代入しています。
number変数にはtasu関数で計算された値が入っているので、hiku関数ではその値が使われます。
num1に5が入っているとするとの箇所でnumberには5と12が足された数値である17が代入されます。 num2に1が入っているとするとの箇所でnumberには17から1を引いた数値である16が代入されます。
numberには上の3番で17が入っていますので、この値が使われます。 getPoint関数はnumber変数の値を返すためだけに存在します。
次の例はアクセス指定子に「private」を指定した例をみてみましょう。 この例ではnumberにprivateを指定しています。
privateもpublicと同じくアクセス指定子です。
クラスの定義の中にデータメンバやメンバ関数を記述する時にはアクセス指定子を書くことになりますが、省略も出来ます。省略した場合にはデータメンバ、メンバ関数はprivateになります。 publicは同じクラスはもちろん他のクラスからもデータメンバやメンバ関数にアクセスすることが出来ます。
privateの付いたデータメンバにはクラスの外から直接アクセスできないので、メンバ関数からアクセスすることになります。
この例のnumber変数はprivateなので、以下のsetNumber関数からnumber変数に値を入れています。 ここで補足をしておきます。
publicやprivateはデータメンバやメンバ関数に付けますが、基本はデータメンバはprivateで、メンバ関数はpublicで指定します。
データメンバをpublicにするとどのような値でも入れることが出来るので思わぬ誤作動につながる可能性があります。
ですのでsetNumber関数のような関数を作って中身のをしてからデータメンバに値を代入する方が安全です。 次は関数の引数としてオブジェクトを使用する方法について説明します。
では例をみてみましょう。 この例で説明したい箇所は以下のs2関数です。
このs2関数はメンバ関数ではない普通の関数です。
この関数にアクセスする方法について説明します。 ここでの注目点は仮引数がのようにオブジェクト変数になっていることです。
このようにオブジェクト変数でデータを受け取ることも可能になっています。
ですのでs2関数を呼び出すときには実引数にオブジェクトを入れます。 このオブジェクトを使って、普通の関数s2の中でのように書くことで、メンバ関数のtriangleArea関数やsqureArea関数などの関数を呼び出すことができるようになります。
ではこのプログラムの説明をしていきます。 結果は以下の通りです。 次の例ではコンストラクタと言う機能を学びます。 コンストラクタとはオブジェクトを作成すると必ず呼び出される特殊な関数です。
データメンバをオブジェクト作成と同時に初期化したい時にコンストラクタを使用します。
オブジェクトを作成と同時に初期化することでデータメンバに対してデータを入れ忘れることはなくなります。
以下の箇所がコンストラクタですが、numberを初期化しています。 コンストラクタの基本構文は以下の通りです。 引数があれば書きますが、無ければ書かなくても結構です。
引数を書かない場合にはコンストラクタの中でのように直接データを入れます。 引数のあるコンストラクタは以下の箇所です。 そして、コンストラクタは必ずクラスの宣言の中のpublicの中で宣言をしてください。
次にコンストラクタを呼び出す方法について説明します。
基本構文は以下の通りです。 この例のコンストラクタの呼び出しは引数が無い場合にはのように引数なしで記述し、データを渡したい時にはのように引数を書いています。
「keisan obj;」で呼び出されるコンストラクタは以下の箇所です。 「keisan obj2(5); 」で呼び出されるコンストラクタは以下の箇所です。 このようにコンストラクタは引数の型や数が違うならば同じ名前のコンストラクタを複数定義することが出来ます。
この例では引数のあるコンストラクタと引数のないコンストラクタなのでオーバーロードが可能になっています。
結果は以下の通りです。 [補足2]
クラスの中にもインライン関数を書くことが出来ます。
通常、インライン関数を書くときにはinlineを付けますが、クラス宣言の中にインライン関数を書くときにはinlineを付けなくても、インライン関数としてみなされます。
以下の赤線で囲まれている箇所がインライン関数です。
通常の関数の書き方で書きます。
他のtasu関数などもクラスの中に書いても結構です。
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